美しすぎる洋風建築、国宝・迎賓館をいろどる屋根材とは
日本のベルサイユ宮殿?
それは、東京、赤坂の迎賓館です。海外からの国賓やVIPを招いて、きらびやかな洋館で開かれる晩餐会の様子をテレビのニュースなどで見たことがあるかと思いますが、その会場となっている場所です。
迎賓館の正式名称は「迎賓館赤坂離宮」といい、明治42年(1909)に当時の皇太子(後の大正天皇)の住まいとして建設されました。設計者は鹿鳴館やニコライ堂を設計したジョサイア・コンドルに師事した日本初の建築家・片山東熊です。片山東熊は当時の西洋建築の第一人者であり、最後の宮廷建築家と呼ばれています。
迎賓館は日本で初めての本格的な洋風建築です。ヨーロッパの宮廷建築の最高峰であるベルサイユ宮殿を模して作られたことから、「日本のベルサイユ宮殿」といわれることもあります。国内唯一のネオ・バロック様式の西洋風宮殿で、建物は鉄骨補強レンガ造、地上2階、地下1階、外壁には花崗岩、屋根材には銅板が使われています。明治以降の洋風建築として初めて国宝に指定されました。
豪華でユニークな屋根の装飾
シンメトリー(左右対称)の建物の中央にあたる正面玄関の切妻屋根の左右には銅像が乗っています。なんと、この銅像は甲冑を身につけた武者。モデルとなった武将がいたのか気になるところですが、洋風宮殿に武者像とは不思議ですね。
また、中央から少し離れた建物両翼の屋根の上には、天穹(てんきゅう)と空想の動物である霊鳥の飾りがこちらも左右対称に2つ配されています。天穹は大空のような広大無辺の空間を球体としてあらわしたものです。この装飾物の本体は銅の鋳物ですが、球体表面の星の飾りと霊鳥には金箔が施されています。
非常に手の込んだぜいたくな装飾ですが、こうした装飾は誰が作ったのでしょうか。
豪華な屋根を作り出した技術とは
屋根材に銅が使われるようになったのは江戸時代ですが、手作業で銅板の厚さを均等に加工することはむずかしいものでした。加えて、銅は高価なこともあり、江戸時代の間は銅の屋根材の使用は神社仏閣や城郭などに限られていました。
それが、明治になると西洋の建築様式とともに金属屋根の施工法が伝わるようになります。また、蒸気機関車が通るようになったことで、機関車の煙に含まれる火の粉による火災から沿線の住宅を守るためブリキやトタンなどの金属屋根の需要が高まりました。
こうしたことから、建築のための金属加工技術が必要となり、これが建築板金のはじまりとなりました。当初は、錺り(かざり)職と呼ばれるかんざしなどを作る職人さんたちがその技術を担ったといわれています。その後、建築板金の技術は急速に発達し、その技術職は板金職人と呼ばれるようになります。
明治は日本の金属屋根が大きく発展した時代だったのです。
迎賓館は当時の一流の建築家や美術工芸家に加え、こうした職人たちが総力を上げて作り上げました。その美しい銅屋根は明治期の建築板金技術の集大成といえるでしょう。
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